「風土改革って言ってるけど、現場だけやらされている感じで、やらされ感満載ですよ!!」
「間接部門の人たちは、他人事ですよね?」
「役員の方々は、あまり関心がないんじゃないですか? ある役員は活動すら知らなかったですよ。」
風土改革に携わっていると、こんな声はよくいただきます。
たしかに、役員の方々の関わりが現場から見えづらい、という状況はあります。では、そういうとき、風土改革をどう進めればよいのでしょうか。
「関わりが見えない」には、2種類ある
まず整理したいのは、「見えない」にも2通りあることです。
ひとつは、実際にまだ積極的に関与していない場合。もうひとつは、現状を踏まえて、色々な施策に手を加えているものの、現場から見たときに風土改革活動と結びついていない場合です。
現場の方々からみると、役員の積極的な動き(実際に各現場に足を運ぶ、話を聞く場を設ける、活動に対するメッセージを発するなど)が見えない場合、すべて前者だと受け止めがちですが、実際には後者のケースも少なくありません。表立って動くことだけが正しい関わり方ではないからです。ともすると、風土改革の中心メンバーですら、「役員は動いていないはず」という先入観があると、前者と捉えがちです。
なぜ、関わりが見えにくくなるのか
背景のひとつが、役員の方々の間の温度差です。
たとえば、風土改革のきっかけが営業部門の問題だったとします。このとき、開発部門の役員の方が、すぐに「自分ごと」として捉えるのは、なかなか難しいものです。
正論を言えば、役員は全体最適を考える立場ですから、他部門の問題であっても当事者意識をもつべき、ということになります。ただやはり、お互いの立場がわかるがゆえに、自分から場の空気を乱したり、他部門の仕事に評論的に口を出したと思われたりすることは、できれば避けたいと考えがちです。結果として「うちの部署は大丈夫だし、状況が悪化しないように注視だけしておこう」と思い、傍観的になるのも、無理のないことだと思います。
また、発信が得意か苦手かという論点もあります。当事者意識をもって取り組んでいても、発信が苦手な役員の方もおられます。そういう方の努力は、なかなか伝わりにくいものです。
一方、傍観的な立場であっても、発信が得意な方は、積極的に関わっているように伝わりやすいものです。もちろん、発信そのものは望ましいことですが、聞き終えたときに、具体的に何をするのかが見えにくいこともあります。
ここまでの話を、課題に対する関わり方(傍観者か当事者か)と、発信の得意・不得意の2軸で整理すると、次の図のようになります。
先ほどの「2種類」は、この図の下段にあたります。実際にまだ関与していない方(静かな傍観者)も、動いているのに伝わりにくい方(見えにくい当事者)も、現場からは動きが見えません。外からは見分けにくいため、まず見極めが必要になります。
温度差に話を戻すと、会社としては「全社の問題だ」と役員会で決めて進めているのに、足並みは揃っていない。こうした状況はよくあります。ですので、一年目から役員全員が同じ温度感で一丸となることを期待するのは、現実的ではありません。
とはいっても、温度差を放置しない:どの部門も問題の根っこは同じ場合も
ただ、温度差は放っておいてよいものでもありません。さきほどの例でいえば、たまたま営業部門で問題が表面化しただけで、本質的な要因は、開発部門を含むどの部門にも同じように潜んでいることが少なくありません。
機械の故障等ではなく、人の行動に起因するトラブルの背景には、たいてい組織としての思考や関係性のクセがあります。たとえば、
- 越権行為はよくない
- 上司や先輩に、整理もついていない意見を言うなんてとんでもない
- 自分の仕事以外に手を出すと叱られる
こうした思考回路が遠因となって問題が起きた場合は、他の部門にも似た思考回路がある前提で、議論を深めていくことが大切です。この「クセ」に手を入れないと、次から次へと類似の理由で、同じ部門で続けて、あるいは他部門で、問題が出てくるのを私も何度も見てきました。
こうした根っこの部分が共通認識になったとき、はじめて自分ごととして動き出す役員の方もいらっしゃいます。この段階でも、すぐには動きにくい方もいらっしゃいます。では、どう進めていくか。ここからが本題です。
進め方の前に:まず、どちらの「見えない」なのかを見極める
どちらの「見えない」なのかによって、役員の方への関わり方は変わります。まず、事務局や周辺の方々を通じて、その役員の方が普段どのような場面で、何を考え、どう動いているかを確認します。
風土改革という名前では動いていなくても、別の会議や施策の中で、すでに関連する働きかけをしている場合があります。
実際にまだ関与していない場合は、進め方①と②から。すでに動いている場合は、進め方②と③から始めるのが近道です。
進め方①:チームで動き、動く空気感をつくる
基本は、風土改革のメンバーを中心としたいくつかのチームで動きながら、全体で動いていく空気感をつくっていくことです。つまり、それぞれのチームに、別々の役員に関与していただくという形です。
目的は、風土改革で掲げた目標を実現することです。役員一人ひとりの動きを待つのではなく、事務局、現場、間接部門、役員の方々が一緒に動いている状態をつくります。
進め方②:当該役員の方に合ったアプローチを考える
たとえば、役員Aの動きが必要な場面では、その方の個性や関心度に合ったアプローチを考えます。
具体的には、役員Aが部門Xの本部長だった場合、その部門でのメッセージ発信を求められることもあります。ただ、対面での発信が必ずしもよいとは限りません。風土が悪い部門で、原稿を読み上げる形だと、受け止め方が否定的になってしまうこともあります。ましてや本人は真剣なのに、発信が苦手なだけだとしたら、本人のやる気も削いでしまいます。
発信を録画やオンラインにしてみたり、原稿にしてみたり、まず第一歩として、その方が一番やりやすく、現場も受け止めやすいアプローチからスタートするとよいです。理想論からスタートすることは好ましくありません。
進め方③:現場に「見えるようにする」
進め方①と②の補完的な活動になりますが、役員の動きのみならず、全体の風土改革活動の中で、誰がどのように動いているか、わかりやすくする必要があります。そういう意味で、社内報での掲載や、定期的な風土改革活動レポートのようなものは効果的です。
また、役員の考え方を知ってもらうという意味では、役員が順番にメッセージを発信していく、リレーメッセージも効果的です。方法は色々ありますが、発信の場は、毎月のWeb配信がある会社ならWeb配信で、定期的な社内報があるなら社内報で構いません。形式も、録画・文章・対談など、それぞれの役員の方がやりやすいもので十分です。
まとめ
役員の方々の関わり方には、グラデーションがあります。見えないからといって、関わっていないとは限りません。
たしかに、プロジェクトの本気度や予算獲得の面からは、風土改革は役員の理解があってこそ、進捗が確かなものになります。ただ、その関わりを待つだけでは進みません。
では、役員の関与が見えない風土改革は、どう進めればよいのか。
現場から関わりが見えないとき、そこには2つの場合があります。実際にまだ積極的に関与していない場合と、動いてはいるものの、風土改革と結びついて見えていない場合です。まずは、どちらなのかを見極めること。そのうえで、チームで動きながら、その方に合った形で、見えるようにしていく。
この地道な巻き込みの積み重ねが、役員の方々を含めた全体の動きをつくっていくのだと思います。




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