離職が止まらなかったり、問題が断続的に発生する状態が続く。ハード面の改革をいくら重ねても変わらない。そんなとき、ふと、こう思い当たることがあります。

これは風土の問題なのでは… 

 役員や部長レベルでこう考え、「風土改革をしないといけないから、自分たちでやるか、コンサル会社を探すか検討してくれ」といった指示が、所管部門(総務部・人事部・経営管理部など)に降りてくる。よくある流れです。

 たいていの場合は、情報収集も兼ねて、本を買い求めて独学を試みたり、コンサル会社いくつかに相談したりすることになります。精度の高い相談にするためにも、自分たちなりにある程度問題認識を整えたうえで相談し、見積もりを取る。そういう形になるかと思います。

 コンサル会社によって、色々な進め方や予算の提案があると思います。私が知っている限りで、一般論としていくつか例示しましょう。

  • 【コンサル会社A】6ヵ月で一気に進めましょう。金額は高くなりますが、集中投入で一気に変えましょう。パッケージがありますので、それに沿って進めれば大丈夫です!
  • 【コンサル会社B】一旦経営陣の責任者の方の話をお伺いしても良いですか?その上で、進め方のご提案をします。ただし、弊社も腰を据えて進めたいので、3年契約にさせてください。
  • 【コンサル会社C】伺った問題状況を踏まえて、簡単なロードマップと共に予算を提示します。いずれにしても、まずはもう少し、経営や現場の意見も含めて多面的にインタビュー等で意見を集めることが必要です。契約期間は3ヵ月。3ヵ月見ていただいた後、大丈夫だと思えば、それ以降年単位での契約をお願いできれば。

 こういったコンサル会社の提案をまとめつつ、決裁者とともに予算やコンサル会社実績等も踏まえて委託先を決めたり、集めた情報を元にまずは自分たちでやってみてとなるか…色々な形があると思います。

 ただ、どのパターンでいくにしても、特に自分たちで進める場合やコンサル会社Aのようなところに依頼する場合に注意いただきたいのは、

かならず、多面的に情報を収集(経営や現場など)した上で、風土改革を進めること

を強くお伝えしておきます。コンサル会社さんによっては、「現場の意見を聞いても虚実交えて多様すぎて、推進側の考えがブレるからやめたほうがいい」と助言するところもあるようですが、問題解決をするのに、問題の根底を探らないという進め方は、私には理解できません。

 一方で、社内でそのように主張すると、こう返されることがあるのではないでしょうか。「そんな時間はない」「とっとと結果を出そう」「余計なことをせず、安く早く」。悪気があるわけではありません。ただ、経験上ひとつ言えることがあります。責任の比重が重い立場の人ほど、この“(できるだけ)早く・安く・波風なく”に傾きやすいのです。

 これは責める話ではありません。早さも、コストも、経営当事者にとっては切実です。ただ、その切実さに折れてしまい、管理部門だけの問題認識で進めてしまうと、ある構図を生みます。

管理部門だけの問題認識をベースに進める危険性

 経営と管理部門の視点“だけ”で把握した問題点でその後のプロセスを進めていこうとするとどういう問題が起きる確率が高まるのでしょうか?

  • そのプロセスが途中で違うと感じても、引くに引けずにそのまま進めようとしてしまう。結果的に現場を混乱させる。
  • 管理部門の社員が推進する際に、だんだんと自信が持てなくなってきて、強く推進できなくなる状況が生まれる。
  • 現場が「(面倒だから)合わせてくれている」ことに気づかず、うまくいっていると感じて進めてしまう…本当は、現場側は「何を的外れなことを…」と思って、呆れる。

すなわち「的外れ」「自信喪失」「面従腹背」な状況を生み出す確率が高まるわけです。

なぜ、問題を多面的に捉えないとうまくいかないのか

 考えてみてください。そもそも風土改革が必要になるということは、長い年月をかけて蓄積された問題が、いま表に出てきたということです。一部の人がサラッと考えて答えの出るような、浅い問題であるはずがありません。

 仮に経営も新入社員も本質的な問題に対する認識がまったく同じだったとしても、相互に信頼関係がなければ、それを認めた上で、一丸となって改革を進めていこうという気運にはなりません。

 実は解決に向けての本質的な問題(最終的な仮説)そのものは、案外シンプルなことが多いです。難しいのは、その成案を得る過程で、それが問題の本質だと、役員も含めて多くの組織構成員が「認める」までの壁の高さです。認めたとしても、変革を進めるにはエネルギーがいるので、変革作業それ自体には後ろ向きになる。これも含めての壁の高さです。

 なぜ壁が高いのか。長く積み上げてきたものや誇りを否定されるからです。「今まで自分のやってきたことが…」という気持ちになり、自己否定するのが怖いという方もおられるでしょう。一方で「それを本質的な課題と認めてしまって、組織は瓦解しないか…」という不安に駆られる方も多いでしょう。

 管理部門側だけで決めてしまうと、この本質の部分を上手に避けた問題提起になってしまうことが多く、現場、特に若手にまったく響かない改革内容になってしまうことが多いのです。

コンサルに“無痛改革”を依頼しても効果はない

 こういった“痛み”を伴いそうなことは、口に出さずともなんとなく感じているものです。そこで、外部(コンサル)に頼むとき、自分たちの経歴や過去の施策に対する現場からのハレーションが及ばない形で、うまくやってくれるのではないかという期待をもっている方も少なくありません。実際、そういう風に言われたこともあります。高い金を支払うんだから、痛みを感じないで、良好な成果だけ受け取れるようにしてくれと。気持ちはわかります。ただ、はっきり申し上げます。無痛を期待して風土が変わった会社を、私は見たことがありません。

 また、無痛を期待して、あるコンサル会社に依頼したものの、うまくいかず、弊社に依頼をくださったクライアントもおられました。ただ、予算を使い果たしていてあまりに低予算、しかもあまりに状況が待ったなし過ぎてお断りした事例もありました。たぶん、当社は小規模なので安くてもやってもらえると思ったのでしょう。ご依頼にいらした担当者や社員のことを考えれば承りたかった気持ちもありますが、さすがに安すぎて承ることはできませんでした。もっといえば、「まだ無痛に期待しているんだ」という空気感を経営と話したときに感じたというのもあります。


 今回の記事では、組織風土改革をはじめる段階で、情報を多面的に集めることが如何に重要かをお伝えしました。もちろん、これがすべての正解ではありません。どんな集め方であれ、プロセスがしっかりしていればうまくいくこともあります。ただ、情報を多面的に集める過程で培われる、これからはじめることへの理解や信頼関係は、推進において欠かせないものです。多面的に見るというのは、丁寧なだけの話ではなく、いずれ立ちはだかる壁を越えるために欠かせない作業だと私は考えています。

 決裁者や上役の方から「(できるだけ)早く・安く・波風なく」という類いのことを言われたときに、ぜひ多面的な情報を集める重要性を思い出していただければと思います。風土改革は、そんなに簡単に効率よく進められるものではありません。遠回りの連続を如何に効率よくするかが重要なのです。

 うまくいったプロジェクトで、後日談を聞いてみると、「なんでもっと早く改善できなかったかね?」ということが多いので、「壁」は物理的に高いというよりも、風土が悪い状態によって、「壁」が必要以上に高く見えてしまうというほうが正解かもしれません。いずれにしても、風土改革をしようと思った段階では、関わりたくない「壁」であることに変わりませんが。

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