
冨山さん、自由記述って、入れないとダメですかね?
エンゲージメント調査の設計の相談で、よく聞かれる質問です。結論から言うと、必須ではありません。ただし、調査結果が出た後の改善策(対策)に使うつもりが少しでもあるなら、一つは入れておいたほうがいいというのが私の考えです。
定量と定性は、役割が違う
まず整理しておきます。
- 定量データ(5段階評価など):全体の傾向をつかむのに向いています。部門間、階層間、経年での比較もできますので、エンゲージメント調査において設問全体の大半を占めるように構成することが好ましいです。
- 定性データ(自由記述):ある部分を深掘りしたり、全体の数字の中に潜んでいる問題点を見つけたりするのに向いています。
数字だけでは「なぜ低いのか」が見えず、自由記述だけでは「どれくらいの人がそう思っているのか」がわかりません。役割が異なります。
自由記述を設問群に入れない理由
自由記述は採用しないという企業には、次のような理由があります。
- 1. 定点観測が主眼
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毎年の定点調査で傾向だけわかればよいという企業さんです。最近は人的資本経営の関係もあり、社外に対して自社の社風を示すためにも使われることが多く、その目的に絞って実施する企業は、自由記述を設けないことがあります。
- 2. 書いてもらった以上、対策しないといけない。だったら、設けない。
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意外に多いです。特に、はじめて調査を任された担当者の方に多い反応です。おそらく、たくさん書かれて、対応に困る不安を持っているのだと思います。さらには、「書いてもらったのに何もしない」と、社員の不信感につながるのではないかという風に考える方もおられます。何を書かれるかわからないという状態はたしかに不安ですので、その懸念自体はまっとうだと思います。
- 3. 経営陣が過剰反応しないか不安
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自由記述は、問い次第では、前向きなことを書いてもらうことも当然できますが、「意見があれば書いてください」的な問いにすると、やはり提案や批判が増えます。経営陣によっては、カッとなってしまう方もおられますし、そういう状況を想定しつつ、「寝た子を起こすのはやめておこう…悪い方向に向かってしまう」と思って、とりやめる会社さんもあります。
少しでも対策をする可能性があるなら、やはり入れておきたい
当社は、対策を前提に依頼してくるクライアントが大半ですが、まずは定点観測からはじめたいという形で、自由記述なしではじめた企業さんもあります。
いざデータをとってみると、どうしてこう思うんだろうねぇ…この設問の得点がこれだけ悪い理由ってなんなんだろうね…という風になったりして、やっぱり取っておけばよかったとなったときもありました。
社外開示が目的の場合でも、同じです。点数の高低だけを示しても仕方ありません。もちろんしかるべき統計分析で、設問の関係から考察を見出すことはできますが、自由記述があると厚みが出て説得力が生まれます。そういう意味でも、記述はひとつはあったほうが良いと思っています。
伝わるかどうかは半信半疑でも、何か伝えたい人は多い
自由記述が貴重な機会になる人たちがいます。
- 直接はものを言いにくい職場にいる人
- そもそも、人と話すのが得意ではない人
こういう人にとって、匿名で書ける場は、ほとんど唯一の声の出し口になっていることがあります。対策を立てる前提でこういう調査をやることは、私は強く推奨していますが、仮に最初は対策を十分に進める体制になっていないにしても、自由記述欄を設け、少なからず、経営陣の目に触れる状況を準備することは、会社経営にとって有意義なことだろうと思っています。
注意:定性が主体になってはいけません
だったら、自由記述だけで良いんじゃないの?という極端な方もおられます。ただ、エンゲージメント調査が定性主体になることは好ましくありません。
自由記述を書く人は、回答者の一部です。弊社の経験では、記入率は2割前後から6割弱で、最近は上がってきている傾向を感じています。ただ、それでも全員ではありません。そこに着目しすぎると、声の大きい意見に引っ張られ、どうしても偏りが出ます(以前、自由記述だけでよいのか?という記事でも書きました)。
あくまで主役は定量、自由記述は脇を固める存在です。
そう構える必要もない
自由記述って、言葉の集合体なので、書かれた言葉の重みを感じる人ほど、深刻に考えがちです。ただ、構える必要はありません。「書いてもらったのに何もしない」ことによる不信感が心配なら、自由記述欄の近くに、次のような注釈文を入れておくとよいでしょう。
匿名性に配慮したうえで、必ず目を通します。ただし、一人ひとりへのフィードバックや、すべての内容への対応はできませんので、あらかじめご了承ください。
また、テキストマイニングをしていると、問いの立て方にもよりますが、ある程度のまとまりで類似したことが書かれるので、個々の声に振り回されずに傾向を掴めることが多いです。
一方で、書かれたことがすべて真実とは限りません。ある一面を強く書いている場合もありますし、匿名とはいえ、かなり際どい内容のときは、しっかり調べないと誤った判断につながりかねません。
「全部は対策できない。でも、読む。そして、必要なところは確かめる」
これくらいのスタンスが、ちょうどよいと思っています。




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