「あの部署のことなんて、私はよく分かっていないんですよ。未経験業務ですし。それなのに、いきなり任されてしまって…」

 異動や登用のタイミングでこういう不安を口にされる方は少なくありません。実務も現場の勘所も部下のほうがよほど詳しい。そんな部門を自分が束ねることになった。心細くなるのは当然のことだと思います。

 未経験だと、部下に申し訳なさそうに業務内容を聞いたり、短期間に表面的な勉強をして、なんとか部下に舐められないようと気負いすぎてしまったり。こういう方々を少なからず見てきましたし、ご本人からどうしたらよいのかと相談を受けたこともあります。こういう行動は引け目に感じることで生まれるわけですが、引け目を感じる必要はまったくありません。

 ではどう振る舞うのが正しいのか。私が見てきた限りでは、未経験でも上手に振る舞っている管理職の方は、次の三点をきっちり抑えているように思います。

  • 自分の役割に自信をもち、毅然とした態度で接している
  • 「知らないからこそ、部下に気楽に聴き信頼関係を作れる」という強みを活かしている
  • 部下の能力を引き出してチーム力を高める意識をもっている

特徴1. 自分の役割に自信をもち、毅然とした態度で接している

 内示を受けたときに、部門がどのような状態で、自分がどういう役割を期待されているのか、人事権者に丁寧に確認した上で、マネジメントの視点でしっかりと異動先の職場を把握している方が多いです。これは、異動先が未経験部門だろうが経験部門だろうが、有能な管理職の方々は皆さんなさっていることですが、特に重要になることです。

 なかには、人事権者の方にいくら理由をきいても教えてくれない場合もあります。そのような場合でもきちんとリサーチをして、可能な範囲で自身の異動理由・目的を探ることは大切です。

 このような丁寧な事前作業の結果、ある程度自信を持って赴任することができます。いずれにしても、グループメンバーに求められる能力と管理職に求められる能力は異なります。管理職の視点を忘れずに、事前学習をした上で、毅然とした態度で赴任することが大切です。

特徴2. 「知らないからこそ、部下に気楽に聴き信頼関係を作れる」という強みを活かしている

 目の前の業務において、部下のほうが知識が多いというのは、いくら毅然と言われても、なかなか難しいところもあるかもしれません。ただ逆にいえば、部下はあなたが未経験であることを知っているので、知らないことを中途半端に勉強して知ったかぶりをされるよりも、いっそ聞いてくれたほうが良いと思っているのも確かです。

 これに対してプライドが邪魔する管理職の方も一定量おられるようですが、私は逆手に取れば良いと思っていますし、実際に、成果を出せている管理職の方は、そのような振る舞いをしている方が多いです。

 知らないことを堂々と聞いてしまうのです。そうすることで、部下も答えてくれます。まぁ、同じことを何度も聞いたら、やる気あんのか…って思われてしまうかもしれませんが💦

 実はこの部下に聞くという行動、それなりに意味があります。私自身もコンサルタントの立場、すなわちその業界事情を知らない立場で質問をすることがありますが、後からこんな風に言われることがあります。

冨山さんが質問してくれたおかげで、今さら聴けないことについて、理解ができました。

質問されて、答えられず、いかに自分が知ったつもりでいたか、思い知らされました…

 つまり、知らない立場で質問することは、周囲に思わぬ効果をもたらすことがあります。マンネリ化した職場の状態を打破するために未経験者を管理職に据えようとした場合には、特に効果的です。

特徴3. 部下の能力を引き出してチーム力を高める意識をもっている

 部下と実務で張り合うのではなく、部下の能力を引き出すこと、引き上げることを重視していることです。部下ひとり一人の個性や希望を把握し、特定の部下の声に振り回されることなく、適切に自分の意思で判断することを大切にしています。

 たとえば、当該職場での勤務経験が長い番頭のような存在がいると、どうしてもその人に頼ってしまうことがあります。当初はそれでもよいかもしれません。

 ただし、その状態が続くと、本来期待された役目を果たせないことが多いです。

 自分自身に、自分の役目はチーム力を高めることと言い聞かせながら、最後は自分で決めるという方が多いように思っています。


 知らないことは、必ずしも弱みではありません。知らないからこそ聴ける、問える、学べる。そして、その姿勢そのものが、チームへの貢献になっていきます。

 もし今、慣れない部門で少し心細くなっている方がいらっしゃったら、「自分は、なぜこのチームに必要とされているのか」を、一度あらためて考えてみてはいかがでしょうか。

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