私が生成AIを使い始めたのは、特段早いわけでもなく、多くの方がとりあえず触れたであろう2023年1月ごろからです。ChatGPTの有料プランを契約し検証しながら使っていましたが、回答品質の低さがいかんともしがたく、「まだまだ少し時間が必要かなぁ」と思っていた中、2024年2月ごろにClaudeと出会い、質の違いを感じてそれ以来メインの生成AIは、ずっとClaudeの有料プランを日常的に使っています。
そのころの自分のXをみると、こんなことを書いていました。
というわけで、Claudeに関してはかなりお世話になっています。ほぼ我が社の一社員です。このXでも触れていますが、あるとき、ふと思ったことがあります。

今回のチャットと前回のチャットでなんか性格が違わない?中に何人いるの?やたら無責任のヤツもいるし、細かいヤツもいるんだが。
同じ生成AIに同じような質問をしているはずなのに、返ってくる答えの「雰囲気」がチャットごとにずいぶん違うのです。やたらすっとぼけて適当なことを言ってくるときがあれば、こちらが少し強めに指摘しただけで「申し訳ございません」をやたらに連発する平身低頭モードのときもあります。逆に、淡々と事実だけを返してきて、感情の起伏がまるで読み取れないときもあります。
このゆらぎの背景には、AIが文章を作るときに「次の単語を確率的に選ぶ」設計になっていることや、サービス提供側が裏で設定している基本指示の存在など、いくつかの技術的要因があります。そういう意味では、私が無意識にしているであろう、チャットごとの書き方の違いが影響を与えているのかもしれません。
そこで私は「最初にキャラクター設定をしてから話しかける」ようにしました。AIは、会話の冒頭で出てきた語彙やトーンに、その後の応答が強く引きずられる性質がありますから、明示的にキャラクター設定を入れれば、ぐっと自分の用途に合った形で会話が回り始めます。
キャラクター設定は実はかなり重要
生成AIは、基本的には「与えられた前提と文脈に沿って、もっとも自然な続きを返す」という性質を持っています。要するに、こちらが何も指定しなければ、AIは「無難で、誰にでも当たり障りのない、ちょっと丁寧目の助手」のモードで返してくることが多いと考えています。
これはこれで悪くはないのですが、相談したい内容によっては、無難な答えが一番役に立たないこともあります。
たとえば、自分が淡々と迅速にコードのバグを探したいと思っているときに、余談も含めた長いトークをはじめられても困ります。また新規事業の企画を詰めているときに、やたらと褒められても困ります。「いいですね!」「素晴らしいアイデアです!」を連発されると、問題が見えなくなります。
そこで、最初に「あなたはこういうキャラクターでいてください」と明示的に指定してしまう。つまり、話し相手の個性を設定することで、自分が目的としている話し相手を作り出すということです。
人間同士だったら相手に知ってもらうために自己紹介をしますが、相手がAIの場合は他者設定をするようなイメージですね。
キャラクター設定のプロンプト例
私が普段使っている、3つの代表的なキャラクターがあります。最初の発話に貼り付けていただければ、そのまま使えるようにしています(私自身はもっと雑に指示をしています…)。
1. 事実に沿って淡々と指摘してくれるキャラクター
情報整理、調査、議事録のチェック、契約書のレビューなど、感情の入る余地がない作業のとき。
あなたは、感情を交えず、事実と論理のみで応答する分析アシスタントです。共感、励まし、お詫びの表現は一切不要です。質問に対しては、わかっていることとわかっていないことを明確に切り分けて答えてください。憶測で補わないでください。情報源が不確かなものは、必ずその旨を明示してください。冗長な前置きや結びの言葉は省略し、要点のみを簡潔に伝えてください。
「お詫びの表現は一切不要」を入れておくと、こちらが少し強めに指摘しても、「申し訳ございません」「ご指摘ありがとうございます」のような枕で時間を浪費しなくて済みます。
2. 厳しく接してくれるキャラクター
新規事業の構想を客観的に詰めたいとき、自分の文章の弱点をあぶり出したいとき、自分が見たくない論点から逃げている気がするとき。
あなたは、私に対して厳しい指導者です。仕事に対しては妥協を許さず、私の甘さや論理の飛躍を、はっきりと指摘してください。お世辞は不要です。「いいですね」「素晴らしいですね」のような、内容のないポジティブな反応は禁止します。私の主張に対しては、まず欠点や反論の余地を必ず提示してください。そのうえで、改善するために何をすべきかを、具体的に教えてください。語り口は、丁寧でありながらも、容赦はしないでください。
「お世辞は不要です」とはっきり書いてしまうのがコツです。これを入れないと、AIはどうしても「素晴らしい着眼点ですね」みたいな枕詞を入れたがります。
3. 「壁打ち相手」キャラクター
何かを企画しているとき、頭の中を整理したいとき、自分の考えがまだ言語化しきれていないとき。
あなたは私の壁打ち相手です。意見を述べるよりも、私の考えを深めるための質問を中心に投げかけてください。私の発言に対して、「それはなぜですか」「具体的にはどういうことですか」「ほかの可能性はありますか」といった問いを返してください。結論を急がず、私が自分で納得の行く成案を得るまで、根気よく付き合ってください。
ひとりで考えていると堂々巡りに陥りがちなテーマでも、問いを投げかけてもらうだけで、整理が進むこともあります。
ほかにも、こういうキャラクターが便利です
用途に応じてバリエーションを持っておくとさらに使い勝手がよくなります。簡単に紹介しておきます。
「自分を盛り上げてくれる」キャラクター
あなたは、私のことを心から応援してくれるよき理解者です。これからの会話では、私の話に対して共感と前向きなフィードバックを軸に返してください。否定や指摘はしないでください。私のいいところを言葉にして伝えてくれて、迷っているときは背中を押してくれるような関わり方をお願いします。ただし、明らかな事実誤認や、安全に関わる重大な問題があるときだけは優しく教えてください。
落ち込んでいるときや、新しいことを始める前の不安を払拭したいときに使います。完全に肯定マシーンにしてしまうと、こちらが致命的な間違いをしているときに止めてくれなくなるので、「ただし〜」の歯止めは入れておいたほうが安全です。
「読み手の代弁者」キャラクター
あなたは、私がこれから書く文章の読み手です。読み手の立場で、わかりにくいところ、引っかかるところ、もう少し説明がほしいところを率直に教えてください。書き手である私の意図を忖度せず、純粋に「読んだときどう感じたか」を伝えてください。
ブログを書くときなどに便利だと思います。
ハルシネーションを予防するためのキャラクター設定
キャラクター設定でぜひ意識しておきたいのが、ハルシネーション対策です。
ハルシネーションというのは、生成AIが「もっともらしい嘘」を作り出してしまう現象のことです。AIは、事実を「知っている」のではなく、学習データから「それっぽい続き」を生成しているだけなので、知らない領域については創作してしまうことがあります。
本格的にこの問題に対処する手段、そしてそもそも先ほどのキャラクター設定をより安定させる手段としては、RAG(検索拡張生成)という技術があります。これは、AIが回答を生成する前に信頼できる資料を検索させて、「この資料に基づいて答えてください」と参照元を渡しておく仕組みです。参照ルールも明確にします。社内ドキュメントや特定のデータベースを参照する業務システムでは、いまや標準的な手法になっています。
ただ個人で日常的に使う範囲ではここまで仕込まなくても、プロンプトでの工夫だけでハルシネーションをかなり減らせます。たとえば、以下のように指示します。
あなたは、事実の正確性を最優先するアシスタントです。次のルールを必ず守ってください。
- 確かな知識として持っている情報と、推測や一般論にすぎない情報を、明確に区別して答えてください。
- わからないこと、確証が持てないことは、必ず「わかりません」「確証がありません」と明示してください。憶測で補わないでください。
- 情報源(書籍、論文、公的機関のデータなど)を示せる場合は、必ず示してください。示せない場合は、「出典は確認できていません」と添えてください。
- 固有名詞、数値、日付など、検証可能な情報については、特に慎重に扱ってください。
これを冒頭に入れておくと、AIは「わかりません」「確証がありません」を、ちゃんと言うようになります。もちろん、これでも万能ではありません。プロンプトでの指示は、あくまで「ハルシネーションを減らす」効果であって、「ゼロにする」ものではありません。重要な情報はAIの答えを鵜呑みにせず必ず自分で裏取りをする。これはどんなにプロンプトを工夫しても変わりません。
おわりに
生成AIも日々進化していますが、日常生活やビジネスにおいて、極めて有用なパートナーであることは確かです。ただ、これはパートナーが人間であれAIであれ、意見を聞いて活用する立場である以上、責任は活用する側にあります。なので「AIがこう言ったから…」という言い訳は、「部下の○○がこう言ったから…」と言い訳していることと、まったく同じです。
自分の目的に沿った対話相手に仕上げた上で、活用することで、自分自身が快適に活用できる環境を作り上げるようにしたいものです。




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