「冨山さん、職場での飲み会って定期的にやったほうが良いかな?私が若いころは毎日のように連れて行かれたものだけど、もちろんそんな時代じゃないことはわかっている。かといって、まったくしないというのも…どうしたらいいのだろうか?」

 クライアントからこんな相談を受けることがあります。管理職にとって「どこまでがセーフでどこからがアウトなのか」という境界線は結構気になるもので、最近は、彼らにとって「えっ?この程度でハラスメント??」という事案も増えているので、部下、特に若手や女性との接するときに、強い警戒心を持つ人が増えている印象があります。

 実際、「一番トラブルの元になる、飲み会は一切やらない。少なくとも自分は参加しない。」と宣言し、割り切っている管理職もおられます。何名か存じていますが、彼らは職場の人とは個人的にも飲みに行かないように徹底しています。コミュニケーションが必要であれば、業務時間内か部下の希望を受けたときにランチタイム、という徹底ぶりです。これも選択肢として理解できます。

 彼らの部下と話していると、「いい人なんだけど、何を考えているのか怖いところがある。」「気軽な相談がしにくい。」「完全にビジネスで線を引かれているから、業務に影響が出る可能性のある、自分のプライベートな事情を相談しにくい。」といった声も聞かれます。

 「じゃあどうすればいいのよ・・・」

 ここで、一般的な飲み会に対するスタンスを見てみましょう。

職場の飲み会は「行きたい」と「行きたくない」が拮抗!

実は上司や先輩も気を使う「飲みニケーション」の場の実態とは【読者アンケート結果発表】

https://dot.asahi.com/articles/-/253714?page=1

AERA DIGITAL(アエラデジタル) 2025/04/07/ 06:30

 この記事によると、飲み会に行きたい人と行きたくない人は拮抗しています。私の実感もだいたいこのような感じです。行きたい人は、普段の人間関係を円滑にできる機会の一つとして捉えている人が多いようです。一方行きたくない人は、公私分離、気遣いがイヤ、時間がかかる、お金が掛かるといったものが多いようです。 

 行きたい人たちの理由、正確にいうと、行くことが好きになった人の理由を掘り下げてみると、職場メンバーの新たな一面が見えて話しやすくなったとか、普段はなかなか知り得ない他部署の話が聞けたりとか、意外な情報にふれることで、結果として良かったと思う方も多いようです。

 行きたくなくなった人たちの理由は、具体例の記載がありますが、一言でいえば、上司や先輩に合わさせられるということです。

 本記事から読み取れるのは、行きたい人にせよ、行きたくない人にせよ、一定の警戒心を持っているということです。

 つまり、飲み会自体が悪いのではなく、その進め方に問題があるということでしょう。

 この記事を読んで思うのですが、今の上司の人たちが若いときに聞いても、大きくは変わらないと思うのです。違いがあるとすれば、出世のためには、上司のご機嫌取りも重要な要素だと認識されていたことでしょう。

 仕事柄、色々な会社のエンゲージメント調査のプロジェクトや組織風土改革のプロジェクトの飲み会に参加しますが、空気感がフラットな飲み会は、参加率が高いです。一方、部下が上司に合わせる空気感がある職場は参加率が低いです。

 イヤなことをイヤといえる社員が増えただけで、心の奥に抱えている気持ちは昔も今も部下側はあまり変わらないのではないでしょうか。

 部下は上司のご機嫌取りのために存在するわけではなく、上司も部下のご機嫌取りをするために存在するわけではありません。飲み会も誰もが楽しめるように工夫するすることが肝要ではないでしょうか。

 ちなみに、クライアント先の風土改革プロジェクトの幹事をすることもままあるのですが(嫌いじゃないので)、以下のようなことを心がけています。

  • 飲み会と言わず、食事会・懇親会という(飲み好きな人たちばかりだったら当然飲み会)。
  • 職場から離れすぎず、帰宅に不便ではない場所を選択する。出張組がいる場合は、特に配慮する。
  • 遅くとも1ヵ月前には日程を決める(家庭事情や出張事情で早めに調整が必要な方に配慮)。
  • 参加者に「どうしても苦手」という食材を聞いておく。
  • 食事の評判がある程度よいところにしておく。下見までは必要ない。
  • ノンアルコールメニューが充実している店舗にする。
  • お手洗いがキレイな店舗にする。
  • 店舗内禁煙を理想とした上で、喫煙スペースが店舗入口付近や近隣にあることが好ましい。
  • 参加したくても参加が難しい方のために、ネット環境が良く、少しでもオンラインで顔を出せるような店舗にする。
  • 予約する際には、幹事も負担にならないよう、できるだけ人数変更に関するキャンセル規定の緩いお店を選ぶ(1名・2名キャンセルがでてもよいように、会費を高めに設定しておくこともある)。
  • 少しでも体調が悪い場合は、予め欠席になる可能性がある旨を伝えてもらうよう参加者にお願いしておく。
  • 会費設定として、男性多め、飲む人多めなどはやめる。基本的にはフラットがよい。役職でゆるい傾斜配分にする程度に留める。

 飲み会は必須ではありません。あくまで職場のコミュニケーションを活性化させることで、社員が気持ちよく働き、会社の業績に寄与することが目的です。ただ、飲み会(懇親会・食事会)を設定することで、空気感を切り替えられたり、人間関係の修復につながることもあります。

 頻度を高くしすぎず、適度に設定する分には好まれるように感じています。

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