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私は組織風土改革のコンサルタントとして、ビジョンや行動判断基準の浸透プロセスを作っていく部分につい最近まで関わっていました。多くの経営者から聞かれる問題点は、せっかく中期経営計画や経営ビジョンを策定したのに、まったく現場ではそれに沿った行動が実践されていないというものです。もちろん、現場で理解し、行動してもらうための手は打っています。社長が何度もメッセージを発したり、経営企画部が小冊子を作りそれをもとに現場で議論をしたり、役員が各現場にキャラバンという形で実際に出向いて話をしたりというようなことです。ですから、現場の社員は、知らなくはないのですが、理解していないという状況がかなり多く見受けられるわけです。
このような浸透のプロセスにおいて大切なことは、下記のようなものが挙げられます。
- 社長が自分の言葉で語り、伝えること
- 一方的に社長の言葉を受けるだけではなく、現場でその意味について議論し、違和感があれば共有しながら、理解すること
- そのビジョンをもとに、自分の行動に置き換えると、いまの行動の何を変える必要があるか?を考える
つまり、「理解しようと思わせるキッカケ」「腑に落ちないことを解消し、理解を修正する場」「自分の身近な行動に置き換えて考える場」が必要なわけです。従来は、対面のコミュニケーションだけでも十分に議論ができていたといいます。飲み会も多かったですし、社内で雑談する機会も多くあったようです。しかし、現状はどうでしょうか?なかなかそうはいかない、そもそも飲み会という文化自体がないということもあります。
そこで、社内Twitterというツールを上手に活用すれば、飛躍的に浸透させ、かつ、理解の相違も極力解消できる可能性を秘めているわけです。社内Twitter・企業内Twitterといわれる、社内利用に限定したTwitter型のシステムはさまざま登場しております。「社内Twitter」と検索すればいくつも表示されると思いますが、たとえば日本製のものとしては、SMARTという商品は比較的有名です。ITのコミュニケーションツールは、若手には浸透しやすいが年配には浸透しにくいと考えている方もおられると思います。たしかに、SNSで失敗した企業も多くあると思います。SNSとTwitterの違いについては、以前書いた記事をお読みいただければと思いますが、Twitter型であれば、うまくいく可能性は極めて高いと考えています。
では、どのように社内Twitterを使うかということですが、たとえば、対面コミュニケーションの前説と後説の役割を担ってくれます。これは、実際にTwitterを活用されている方であればご理解いただける直感的にご理解いただけるのではないでしょうか。対面コミュニケーションのみで議論を進める場合、一番の問題点は、基礎情報を共有するまでに時間がかかること、そして、次の議論までに大方内容を忘れてしまうことです。実際、経営状況がめまぐるしく変わっていく昨今、なかなか議論のために時間が割けないというのは十分に理解できます。ですから、一回あたりの対面コミュニケーションの質を高めるために、社内Twitterがつなぎとして大きな役割を果たすわけです。具体的には、
「広く浅い情報収集(社内Twitter)」→「情報に基づいた深い議論(対面)」→「でてきた違和感の修正・理解(社内Twitter)」
というふうにつなげることができるわけです。ほかにも社内Twitterが果たす役割は考えられますが、際限ないので、今回はこの一例にとどめておきます。
種類 | 対面コミュニケーション | 社内Twitter |
---|---|---|
対話の深さ | 深い | 浅い |
対話の情報 | 少ない | 多い |
対話に取られる時間 | 決められてしまう | 自分次第 |
参加機会の均等性 | 高い | 初期は低い |
対話が本音・もしくはそれに近いレベルに達するための条件 | 信頼関係 | 日常の場でTwitter内の発言について説教しない |
ここまでは、社内Twitterの必要性について書きましたが、社内Twitterを導入しにくい理由についても考えます。社内Twitterの導入にためらう理由、導入されたとしてもうまく機能しな理由は、以下のようなものが挙げられます。
- 社内SNSで失敗しているので、同じ失敗は繰り返したくない
- もし、誰かがポロッと機密情報をもらしたときに、一気に広まってしまい、IR上問題が出る可能性がある
- ウソの情報や根拠のない噂の回りを早めてしまう可能性があり避けたい
- 妙なところで結託されてしまい、経営の敵ができてしまうこと
- 上司の目が気になって、発言しにくいのが明明白白なため、あまり意味を感じない
1については前述したとおりで、同様のものと考えてはいけないと考えています。手軽さが格段に異なります。2については、確かに怖いことだと感じます。ですが、これだけ色々な手段のコミュニケーションがとれる時代に、果たして社内Twitterだけが機密情報の漏れる経路といえるでしょうか?たしかに、あえて経路を作る必要はないという議論もあると思いますが、それを気にするのであれば導入はやめるべきでしょう。3~4については、規制すれば規制するほど構成される要素です。社内Twitterで広まらずとも、同期のメーリングリストや2ちゃんねるなどを介して広まることでしょう。5については、多くは、慣れで解消されると考えています。まったく解消されないとすればそれ自体が組織風土・体質に問題があるということが明確になります。
まとめますと、社内Twitterは、ビジョン浸透において、対面コミュニケーションと組み合わせると、相当な効果を生む可能性を秘めたツールだということです。たしかに、前述したように、情報漏洩をもたらしてしまう危険性やいわゆる炎上してしまう可能性もあります。そこは腹をくくるべきところですが、これは社内Twitterの問題ではなく、企業風土それ自体の問題です。組織風土改革と社内Twitterの活用を同時並行的に進めることは、間違いなく経営効率を高めると確信しています。
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