組織風土改革はバタフライ効果がある

 組織の風土を変えるというと、大規模な改革や劇的な変化を求めがちです。実際に組織風土改革を進めていく過程で、「あいさつ運動」「ありがとうカード」など、よく耳にするような細かい活動を提案すると、「そんなことをやっても無駄でしょう…」という空気感が漂うことがあります。

 そういった活動を無駄と思う背景には、「今までそういったことをやってきたけれども、続かなかったから」という経験がある場合もあります。そのため、自分たちでは気づかないような、とにかくドラスティックな変化を起こせるような活動の提案をコンサルタントに期待する方もおられます。

 ただこれは、投資で確実に儲かる方法を教えてくれといっているのと同じで、そう簡単には実現できないことが大半です。儲かる確率を高めるためには、投資額や投資幅を広げなければならないのと同じように、風土改革においても、そういうドラスティックな変化を起こすためには、多くのリソースの消費と多くの階層の方の関わりが必要になります。

 よって、そういった活動を提案したとしても「人的リソースが足りない」「そんな上の人にお願いできない…」など、様々な制約を持ち出されることも多いのです。

 実際、風土が悪化してしまった企業ほど、こういった制約は多々存在するのでドラスティックな変化は難しく、活動当初は小さな日常的な活動の積み重ねを通じて、改革に向けての素地づくりが重要です。もちろん、将来的な目的・目標を描いた上で、小さな活動を設定していくわけですが、目標・目的に沿った小さな活動を愚直に進めていくことで、「バタフライ効果」(蝶の羽ばたきが遠く離れた場所で大きな変化を引き起こす現象のこと)を生み出すことにつながります。

 このような小さな活動に愚直に取り組むための、進め方・意識付けにおいて重要なポイントを5つ紹介したいと思います。

目的・目標の設定と、それに沿ったマイルストーンの重要性

 小さな活動が自然と大きな変化につながるわけではありません。これらの活動が目的とする風土改革に確実につながるようにするためには、明確な目的・目標の設定と、それに沿ったマイルストーンの設定が不可欠です。活動開始時点で数ヶ月かけて、変革中心メンバーで充分な議論をし、活動の目的と目標、そしてマイルストーンを決めましょう。なお、これら3つは、活動の進捗の過程で修正していくことを是として進めていきましょう。

「小さな活動」を軽視しない

 挨拶運動、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)、整理整頓、ランチ会などの現場レベルの小さな活動は、一見すると取るに足らないものに見えるかもしれません。しかし、これらの活動を軽視してはいけません。なぜなら、これらの小さな取り組みこそが、職場の雰囲気の変化や人間関係の変化をもたらし、大きな風土改革の種となるからです。

小さな積み重ねの力を信じる

 一つひとつの小さな活動は、それ自体では大きな影響力を持たないかもしれません。しかし、これらの活動が継続され、広がっていくことで、徐々に大きな変化が生まれていきます。たとえば、挨拶運動によってコミュニケーションが活性化し、5S活動によって効率性が向上し、それらが相まって組織全体の雰囲気や生産性が向上していくことも充分に起こりえます。実際、こういった活動を通じて、多くの社員の「知恵だし意識」が高まっていき、意見が活発化されることも多いのです。

活動全体のコントロールと褒める文化の重要性

 組織風土改革を成功させるためには、これらの活動をコントロールし、方向性を示す事務局の存在が重要です。しかし、事務局の役割は単なる管理ではありません。小さな活動に取り組む従業員たちが褒められ(評価され)、その努力が認められるような仕組みづくりが大切になります。「挨拶運動で職場の雰囲気が明るくなった」「5S活動で作業効率が上がった」といった小さな成果をきちんと取り上げ、共有される状況をつくることで、改革に向けたモチベーションを高め続けることができます。

こだわりすぎない

 組織風土改革を進める上で、完璧を求めすぎないことも重要です。小さな活動を始める際、あるいは継続する中で、「もっと効果的な方法があるのではないか」「他の企業ではどうしているのだろうか」といった思いにとらわれすぎてしまうことがあります。しかし、こだわりすぎることで活動自体が止まってしまったり、考える時間ばかりで活動が遅れ気味になっては元も子もありません。

 重要なのは、まず行動を起こし、そして継続することです。完璧でなくても、小さな改善を重ねていく姿勢こそが、長期的には大きな変化をもたらします。こだわりすぎないことで、活動に柔軟性が生まれ、多くの社員が関わりやすくなることもあります。

まとめ

 組織風土改革は、一朝一夕には成し遂げられません。しかし、小さな活動の積み重ねが、やがて大きな変化を生み出すのです。バタフライ効果のように、現場レベルの小さな変化が、最終的には組織全体を変える力を持っているのです。重要なのは、これらの小さな活動を軽視せず、目的に沿って継続的に取り組み、その努力を正当に評価することです。そうすることで、組織は着実に、そして力強く変革への道を歩んでいくことができます。

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