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今日から事実上の年度初めですね。本年度もよろしくお願いいたします。
だからというわけではありませんが、久々に当社の主力商品の意識調査についてお伝えしたいと思います。コロナ禍以降、一見手軽な意識調査は、多くの会社積極的に販売するようになった印象があります。ですが長年意識調査を主力商品として扱ってきた当社としては、ただ計測するだけではない根底にある思いをお伝えしたいと思いブログにまとめることにしました。
結構長いですが、ご一読いただけると嬉しいです。
当社の意識調査にかける思いと期待する役割
従業員の「声」に真摯に向き合いたい。経営の「考え」を設問文から伝わるようにしたい。そして、食い違いを減らしたい。
当社の意識調査は、私が前職で開発した設計をベースに日々進化させています。その根底にある考えは、
経営と社員の食い違いを減らしたい
この一点につきます。そのためには、調査を始めるにあたってその会社にあった設問を準備し、その会社にあった分析手法を準備し、その会社にあった報告方法で提供するということを終始一貫大切にしています。正直なところ「そんな手間は掛けてられない。サクッとやってくれ。」と言われたこともありますが、そういった会社の場合はお断りしています。調査を設計するメンバーを決め、外部の専門家である私と一緒に考えていただくことで、質の高い意識調査になり、それがキッカケで当を得た改善活動、改革施策が生まれることも少なくありません。
たとえば、調査の最後の自由記述欄に「アンケートに答えていくうちに、自分の会社がどう考えていて、社員に何を期待しているのか感じ取れた気がします(原文ママ)。」という記載があったことがあります。これは本当に嬉しかったです。事務局の皆さんは記入者がわからない形に加工して事務局のメンバーに読んでいただきました(この規則も会社ごとに変えています)。ある女性社員が「私も作り込んでいく中で、勝手なことを言っていたなぁって思いましたもん。質問に答えていくだけで伝わったのであれば、本当に事務局になって良かったと思いました。」と読みながらおっしゃったのは印象的でした。
逆に、結果を見た担当部署の幹部や経営者は、当社の意識調査だと結果が悪かったとしても(笑)、「これは質問が悪いんだ!こんな調査意味がない!」と言いにくいのです。自分たちの社員が設計に加わっています。私も解りますが、目の前に悪い結果が出ると、どうしても最初に一言文句を言いたくなります。文句を言ったが最後、のっぴきならなくなり、結果に向き合えなくなることもしばしばです。一方、自社で構成していると「まずは向き合おう」という気持ちになりますから、悪かろうがよかろうが結果に向き合いやすくなります。他社との比較もしづらいし、できたとしても質問文章に違いがありますから、正確ではなく逃げ場があります。
意識調査は経営者や幹部にとっては「通知表」と感じてしまいます。ですが、2年、3年とやっているうちに、改善点が見えてくるので、ドキドキ感には慣れてきます。むしろ、社員の声をみるのが楽しくなる方すらおられます。
そんな中で座談会を開いてみたり、部内の話し合いに活用したりと、職場の意識というところに焦点を充てた議論が、データに基づいてしやすくなるので、経営と現場の距離が近くなるというメリットがあります。
現在価値がわかるのもではなく、将来価値がわかるものを提供したい=業績の先行指標であってほしい
前職のコンサルティング会社で意識調査を設計し商品化したころ(2007年半ばですからもう15年も前…)は、まだまだ競合する会社も多くありませんでした。その手法もさほど差はなく、コンペになってもあまり競合がいませんでした。2019年ごろから増え始めてきており、コロナ禍を機に、一気に主力商品化し前面に出して販売しているコンサルティング会社さんもおられます。
意識調査と一言でいうと、どうしても従業員の「満足度」調査を思い浮かべる方がほとんどです。ある部分では、今も昔もそれは変わらないかもしれません。ただ、当社は
業績の先行指標であってほしい
この点を重視しています。私が信頼する経営者の先輩に15年前に言われたことなのですが…もちろん、現状その組織に満足しているかを確認することも大切ですが、現在のその組織の風土・ビジョンの中で働くことで、将来的に会社にとってメリットとデメリットがどのように生じるのかをわかるようにすることが何より大切だと思うのです。その結果、組織の原動力の一つである「ヒト」の現状がわかり、業績の先行指標になりえるのではないかと考えています。平たくいえば、従業員の現在価値ではなく将来価値の観点を常に意識しています。
実際、とある会社の営業部門における全国にある支店でこの傾向が見られました。調査結果が悪化すると営業成績が悪化し、調査結果がよくなると営業成績が改善されるというものです。ただ、後者のほうが反映までに時間がかかるので、支店長が替わった後に成果が出て前支店長の努力の結果と見られないことが多々あり、その点は残念ではあります。正直なところ、ヒトの意識だけが営業成績に結びつくわけではないので、絶対とはいえませんが、この傾向が出たことで、この会社さんが一つの指標として参考にしたことは事実です。
当社の意識調査の特徴
自社の経年変化を捉え、予測し、改革に役立てるためにオーダーメイドで設計する
そもそも、当社は他社と比較することを前提としておりません。あくまで例年できれば同じ時期に自社の状況を定点で観測することを目的としています。1年目はその会社の現状を把握し、2年目以降会社としての変化を探ってほしいからです。1年目にきっちりとその会社にあった質問設計をすることでそれが可能になります。もちろん、多くの会社さんが多数の事例をもとに構成されたパッケージ型(定型型の質問群)でも可能ではありますが、文章がフィットしなかったり様々な問題が生じます。
そういう意味でも、当社の意識調査は貴社内に設計担当者を置いていただきます。一定規模以上であれば事務局化していただき、チームとして議論する形が好ましいです。質問設計のしかたは色々とありますが、まずは質問設計のコンセプト(何を測りたいか?会社をどういう状態にしたいか?会社として社員にどういうメッセージを質問から感じ取ってほしいか?など)を作り上げます。そして、どんな質問をしたいかを出し合い、絞り込みその会社の社員の様々な特性(地域性・国際性、職種、モノの読み書きに対する慣れ度合など)を踏まえて、質問数・文章の精度(長くても正確な方がよいか、短くてもわかりやすいほうがよいかなど)・利用する用語などを決めます。
いずれにしても、長期的に耐えうる質問を採用し、質問群を構成します。そうは言っても、一度調査をやると、この質問は不要だったなとかこの質問は少し角度が違ったななどの修正希望が生じます。それを2年目の調査準備段階で修正していきます。肝となる質問はできる限り変えず、その年度独特の課題を質問化したり、様々なことをしていきます。
回答収集時にできる限り本音で回答いただけるような回答環境・属性設定等を考慮する
回答収集にもかなり気を払います。意識調査の目的は、よい結果を書いてもらうことではありません。現状を把握することです。当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、ここがかなり重要なポイントです。詳細は割愛いたしますが、IRや採用ページに使うべく、よい結果を出すべきという前提で調査を依頼する会社さんもあります。そうすると、記名調査の上に、妙なプレッシャーを社員に掛けるようなことが生まれます。こういうことをしてしまうと、どうしても実際の姿は見えてきません。
弊社がこだわるのは、可能な限り本音でご回答いただくということです。本音でといっても、初年度はなかなか難しいものですが、やり方一つで案外本音で書いていただけるものです。パッケージ型から当社の意識調査に切り替えた、とあるお客さまがおっしゃったのは「実は今までの回答率は50%弱だったんです。なのに、冨山さんといっしょにやったこの調査は、95%も回答率がでた。どうしてでしょう?」ということです。基本的には、次の3つが影響を及ぼしたと考えています。
- 回答者の匿名性担保(回答者にお答えいただく属性を細分化しすぎない)
- 調査前の事前周知の徹底
- 調査質問群の回答者にとってのフィット感(質問量や質問文章の質)
回答者は、自分が書いたとバレたくない、設計者・経営者は、できるだけ細かくデータを見たいわけですが、この両者の両立には圧倒的な信頼関係が必要です。調査を続けていくうちに、誰が書いたということではなく、何が問題かに着目して改革が進んでいることが認知されてくれば、信頼関係ができてきて、属性の細分化が可能になります。
意識調査の導入初期や信頼関係が充分に醸成されていないという環境下では、匿名性に配慮し、少しデータの奥深くまでは見にくいという状態で妥協することも大切になります。属性の細分化しても回答はなされるかもしれませんが、それが見せかけのデータでは、誤った改善活動・改革活動にしか繋がりませんので、その点は注意が必要です。
分析に様々な数学的な手法を使いつつも、報告段階でのクライアントの納得感にこだわりたい
分析も丁寧にやる必要があります。データというのはただ、回答者が回答した結果を鵜呑みにできるものではありません。回答率やその会社の風土、職種による回答傾向と複合的に分析することで、数値の背景にある実態が見えてきます。データとして出すものは数値ですが(一部自由記述等ももちろんあります)、数値だけでは測れないものをコメントととして添えることで、その後の会社の改善活動に役立てていただくわけです。
数値だけでは、「で?」ってなることが多いのです。かといって、数値がないと経年では比較しにくい。数値化した回答データと自由記述、そして当社の読み取りから改善に役立つ報告書にまとめていくのが当社の役割です。
報告方法も会社によって変えます。社内に事務局やPJチームがある場合は、報告に際して必要な情報をお伝えした上で、経営陣や各現場等にはPJチームから報告いただくことが一番効果があるかとは経験上感じています。ただ、私自身が報告することも、もちろんあります。このあたりは、会社のご方針や実効性を考慮した上で、相談して決めております。
もちろん、報告後の実際の改善活動・改革活動の進め方やサポートについても対応しております。
設計、回答データ収集、分析、報告書作成まで、担当者は一貫して経験豊富な一人のコンサルタントが対応
今までご説明したことを、私自身が責任を持って対応いたします。クライアントとの打ち合わせはすべて私自身が対応いたしますし、分析自体も私自身がおこないます。年間10社以上はできません。それくらい事前準備から報告、事後フォローまで丁寧に手をかけています。実施時期もご相談させていただき、可能な限り被らないようにし、全力を注げるようにしております。
どういうお客さまに使っていただきたいか
自社を真剣になんとかしたいと思い、その変化を捉えたい、変化を予測したい方
弊社の意識調査は、調査データ収集後、2週間~3週間程度報告までお時間をちょうだいしております。規模によっては、もう少しお時間をちょうだいする場合もあります。今は、意識調査を提供している多くの企業様は、場合によっては、調査終了の翌日には定型コメントとともに見られる会社も出てきています。ただ、私はそのデータの背景をきちんと読んだ上でお伝えしたい。データというのは、ただ分析すれば良いというものではない。この数値であれば、こういうときはこういう数学的手法を使うと、なにかが見えるかもしれない…という数学的経験も必要です。
早急にライトな結果を求める今の時代には、そぐわないのかもしれません。一方でじっくり議論をして、じっくり会社を変えていきたいという企業様も存在します。そういったお客さまが弊社の意識調査をご活用いただければ、納得感を持って活用いただけると存じます。
議論をしながら変えていくものと考えている方、すなわち、議論の時間は重要と考えている方
おそらく、とっとと結果だけほしい。実態だけ軽く知りたい。他社と比較したいという方々には、当社の意識調査は不満しかないと思います。ただ、「どうにか会社を変えていきたいから、その問題点を議論をしながら徹底的に探りたい。」と考えている方には、現状や改革過程の定点観測をするためには最適なものと自信をもっておすすめできます。
まとめ
今まで弊社の意識調査をご利用くださったお客さまは、すべて口コミもしくは私のブログ等をお読みくださった方です。今回この記事を書こうと思ったのも、自分の意識調査にかける思いを書いた新しい記事がなかったからです。
残念ながら様々な理由でコロナ禍の中で、意識調査を中断・停止・実施頻度の減少が生じています。それも仕方がないことだと思います。むしろ苦しい中でも実施間隔を広げてでも必ずやるとおっしゃるクライアントさんがおられることに、弊社の意識調査の価値を実感したという面もあります。正直なところ、価格面だけでみれば、手のかかる弊社の調査よりも安く提供している企業はたくさんあります。ただ表現は難しいのですが、手のかかり方の割には安価だと感じているクライアントも多いです。
なんにせよ、少し時間の余裕が出たところで、このような記事をきちんときちんと書いて、改めて弊社にとって如何なる思いをもって意識調査をやっているかを伝えたく記事にしました。ご検討いただければと思います。
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